チェーン店が好きだ。
というより、チェーン店をもう少しちゃんと評価したほうがいいと思っている。
世の中には、チェーン店というだけで、なぜか少しダサくなる風潮がある。
個人店なら「こだわりがある」。 知らない店なら「センスがいい」。 ちょっと変わった内装なら「世界観がある」。
でもチェーン店になると、「まあ、チェーンだし」で終わる。
いや、待てよと思う。
デザインやつくりだけで個人店とチェーン店を真正面から比べたら、チェーン店のほうが9割くらい勝つんじゃないかと思っている。
そりゃそうだ。
そもそも、個人店を一軒運営するより、チェーン店を成立させるほうが、いろんな頭を使う。
店のデザインだけじゃない。 商品、価格、動線、接客、仕組み。
いろんなことを考えて、それを一つの形にしている。
個人だって、作り込もうと思えば作り込める。一人の感覚や経験の中で、ものすごくそれらしく作ることもできる。
でも、それだけでチェーン店と真正面から勝負できるほど、世の中は甘くない。
無印良品なんて言わずもがな。
あのロゴ、普通に格好いい。
ドン・キホーテなんて、あのごちゃごちゃした店内を成立させている時点で、もう一つのデザインジャンルですよ。
あれが個人店だったら、「かなり攻めた空間ですね」とか言って、妙に褒める人が出てくると思う。
でもドンキだから、「ドンキってこういうもん」で終わる。
しかも、あれだけ商品があるのに、ちゃんとドンキに見える。
びっくりドンキーの内装を見たことがありますか?
あれが一軒しかない店だったら、「独特な世界観を持つハンバーグレストラン」とか言われて、雑誌に載っていてもおかしくない。
でも、びっくりドンキーだから、びっくりドンキーの内装で終わっている。
群馬のいっちょうなんて、もはや城ですからね。
あの広い建物に個室があって、ところによっては中庭まである。
あれを知らない店として見たら、どれだけ大げさな建築として評価されるんだろう。
しかも、そこで普通にご飯を食べている。
セブンイレブンもそう。
どこにでもある。 便利すぎる。
そして、よく見ると普通にデザインがいい。
あの看板、あの配色、あの妙に明るい店内。
毎日見ているから何とも思わないだけで、もし全国のセブンイレブンが全部なくなって、何年か後に一軒だけ昔のまま残っていたら、たぶん今とは違う目で見る。
「あれ、セブンってこんなに格好よかったっけ」と。
でも、そのとき急に格好よくなったわけではない。
なくなったから価値が生まれたわけでもない。
そこにあるときから、そこにあった。
ただ、あまりにも近くにありすぎて、見る必要すらないものになっていただけなのだと思う。
これは昔のものを見ていても思う。
「80年代」「70年代」「昔の広告」なんて、一括りにしてしまう。
でも、その時代を生きていた人たちにとっては、それは「昔」ではなく、そのときの現在だった。
その中で、これは格好いい、これはダサい、こっちが新しい、これは自分らしい、とやっていたはずだ。
今と、たぶんそんなに変わらない。
遠くから見ると一つの括りに見えるものの中にも、一つ一つ違う判断がある。
チェーン店も同じなのかもしれない。
「チェーン店」という言葉を見た瞬間に、もう評価を終わらせてしまう。
個人店の古い椅子には「味がある」と言うのに、ファミレスの椅子には「普通」と言う。
知らないブランドの変なロゴには「いい」と言うのに、全国で何十年も使われているロゴには「見慣れている」としか言わない。
もしかしたら、ものを見ているんじゃなくて、「それを好きだと言ったときの自分が格好いいか」を見ているのかもしれない。
「みんなが知らないものを知っている自分」のほうを、ちょっと好きになっているだけなのかもしれない。
でも、それって結局、店を見ているというより、「チェーン店」という記号を見ているだけなんじゃないか。
無印良品のロゴを、ちゃんと見たことがあるか。
ドンキのごちゃごちゃを、初めて見る空間みたいに見たことがあるか。
びっくりドンキーの建物を、知らない店として見たことがあるか。
いっちょうなんて、城ですよ。
セブンだって、毎日そこにあって、しかもちゃんと成立している。
よく考えたら、かなりおかしなことをやっている。
それなのに、「チェーン店だから」という理由だけで、それを見なくてもいいものにしてしまう。
たぶん、良いものが見つからないんじゃない。
「これは良いものだ」と思うための条件を、自分たちで先に決めすぎている。
珍しいもの。 知らないもの。 個性的なもの。
そういうものには、最初から目を向ける。
でも、毎日見るもの、どこにでもあるもの、みんなが知っているものは、もう見なくてもいいと思ってしまう。
もっと近くを見てもいいのかもしれない。
遠くまで探しに行かなくても、最高のものは案外そこら中にある。
チェーン店、最高ですよ。
ちなみに、iliのすぐ近くにあるいっちょうの、 一番奥の部屋、906がお気に入りです。