店内で流れている音楽について聞かれることがあります。
せっかくなので、少し書いてみることにしました。
2Fのiliでは、普段流している曲をプレイリストとしてまとめています。
営業中に流れていたものを追加したり、入れ替えたりしながら続いています。
気が付くと、似たような場所へ集まっています。
浮遊感のあるもの。
少し輪郭の曖昧なもの。
意味が先に届きすぎないもの。
言葉がある曲もありますが、何かを伝えるために存在しているというより、空気として漂っているようなものが多く残っています。
理解できる言葉や、まっすぐ届くメッセージが悪いわけではありません。
ただ、それらは時々強すぎます。
一つの解釈や、一つの方向へ連れていく力があります。
2Fではもう少し曖昧なままでいてほしいと思っています。
どこへ向かうのか分からないもの。
何を感じるのか決まっていないもの。
少し迷い込むような感覚のあるもの。
そういう音が多く残っています。
知らない場所へ行きたいわけではありません。
どこか遠くへ行きたいわけでもありません。
ただ、少しだけ今いる場所の輪郭が曖昧になるような感覚があります。
気が付くと長く残っている曲には、そういうものが多い気がします。
夢という言葉も近い気がしますが、それだけでもありません。
綺麗なだけでもなく、優しいだけでもなく。
少し不安定で、少し怖さがあって、それでもなぜか離れたくならない。
そんな感覚です。
昔からそういう音を繰り返し聴いていた気がします。
気が付くと、また同じような場所へ戻っています。
一方で、1Fの裏部屋enでは少し違うものが流れています。
こちらは営業日に流していた曲を記録として残しています。
2Fと比べると、もう少し自然に耳へ入ってくるものが多いと思います。
歌があるものもあります。
言葉があるものもあります。
ただ、それは何かを強く伝えるためではなく、その場の時間に自然と重なるために存在しているように感じます。
もともとenという名前は、人や服や様々なご縁から付けた名前でした。
今思えばずいぶん単純な発想です。
それでも、その頃に考えていたことは案外残るものです。
店は少しずつ変わります。
置いているものも変わります。
流れる音も変わります。
それでも気が付くと、似たような空気へ戻ってきます。
静かなもの。
少し神秘的なもの。
ただ落ち着くためだけの音ではありません。
説明しにくいものですが、どこかで心がほどけていくような感覚があります。
初めて来た場所なのに安心するというよりは、しばらく離れていてもまた戻って来られるような感覚に近いのかもしれません。
ただ、何度離れてもまた手が伸びます。
zattaではプレイリストを流していません。
その時に聴きたいアルバムを一枚選び、そのまま流しています。
今は、
松井一平、元山ツトム、YTAMOによる
「don't light up the dark」
という作品が流れています。
こうして書いていると、もっともらしい理由はいくらでも見つかります。
理由を探し始めると、いくらでも言葉にできます。
けれど、そのどれも後から付けた理由のような気もしています。
最初から明確な考えがあったわけではありません。
気になったもの。
何度も聴いてしまうもの。
気が付くと残っていたもの。
そういうものを集めていたら、今のようになっていました。
音楽について書こうと思っていたのですが、結局は店の話になってしまいました。
音楽も店も、たぶん同じです。
もしよければ、作業中や移動中にでも聴いてみてください。